脆弱性骨折とは? わが国では、近年の高齢化社会による骨粗鬆症患者の治療は非常に重要なものとなってきています。骨粗鬆症は骨の強度が低下し、わずかな外力による骨折でも骨の破壊が甚大なものになることもあります。このように軽微な外力で起こる骨折を「 脆弱性骨折 」といいます。日常生活機能の低下を防ぐためには、早期に骨折部を固定し、速やかに受傷前と同等の運動を開始することが重要です。
手術治療 下肢の脆弱性骨折は、早期歩行獲得のため、手術が必要となる場合が多くなります。脚の骨が骨盤につながるところでおきる「 大腿骨近位部骨折 」は、下図のように骨折型に応じたインプラントを用いて固定します。 大腿骨近位部骨折 その他のインプラント 小侵襲手術 また近年は、骨盤の脆弱性骨折も増加しており、上図のように小侵襲手術で固定することもあります。
ドクター紹介 整形外科医 福島 達也 Fukushima Tatsuya 高齢者に多い脆弱性骨折は合併症を有することがほとんどで、生活習慣病や内科的疾患の治療、骨粗鬆症治療、理学療法など、多職種が連携して早期手術と術後のケアにあたる事が重要です。ご相談等ございましたら、お気軽にご相談ください。 医師紹介ページはこちら
股関節とは? 股関節は、体幹と下肢をつなぐ大きな関節で、単体では人体最大の関節です。様々な日常生活を行う上でも大変重要な関節といえます。 股関節の構造は、受け皿である骨盤側の寛骨臼(臼蓋)と球状の大腿骨頭から構成され、それぞれの表面が関節軟骨に覆われていて、股関節の動きを自由に滑らかにしています。さらに寛骨臼の周囲には関節唇と呼ばれる柔らかいパッキンのような役割をする軟骨が存在し、関節の中は陰圧(吸いついている状態)に保たれています。このような解剖学的な構造により、正常な股関節は大変安定した状態を保っています。
変形性股関節症とは? 変形性股関節症とは様々な原因によって関節軟骨が変性または消失し、強い痛みや機能障害を起こす状態の総称といえます。日本人の多くは発育性股関節形成不全による寛骨臼の発育障害によって続発するものが原因の80%を占めているといわれています。 正常であれば非常に安定した関節である股関節が、寛骨臼が浅いことによって股関節の不安定性が生じ、それによって、軟骨が徐々に変性または消失していくことが大きな原因です。圧倒的に女性に多く、またアジア系の人種に多いのが特徴です。 寛骨臼形成不全 正常な股関節 変形性股関節症の進行 変形性股関節症は進行性の病気であり、寛骨臼形成不全だけがある「前期」、関節軟骨が部分的に傷ついている「初期」、関節軟骨が一部消失して骨と骨が接触し始める「進行期」、関節軟骨がほとんど消失して、骨の変形が著しい「末期」と進んでいきます。
治療法 各種保存療法(鎮痛薬、リハビリ、体重コントロールなど)を行っても疼痛の改善がない場合は、手術的加療を行います。特に形成不全の程度が強い人は、ほとんどの場合、最終的には手術的治療が必要になってきます。 若年齢(20~40歳代)で比較的初期の状態であれば、骨盤をくりぬいて寛骨臼のかぶりを深くする「寛骨臼回転骨切り術」という手術を行うのが一般的です。この手術は、若年齢で初期の状態であればあるほど、その治療成績が良いといえます。 40~50歳代以降で病期が進行してくると、手術成績も不安定となり「人工股関節置換術」の適応となってきます。 人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty: THA) THAは1960年代頃より急速に世界的に行われるようになり、現在では国内でも年間約5~6万件の手術が行われています。使用されるインプラントの材質や手術手技の進歩により、整形外科領域の手術の中でも最も成功した手術のひとつといえます。関節由来の疼痛を劇的に改善させ、またある程度の脚長補正も可能で、大きな福音を患者さんにもたらすことが可能です。 THAの合併症は、脱臼、ゆるみ、感染があります。以前は人工関節のゆるみが大きな問題でしたが、材質の進歩によって、かなりの長期耐用性が期待されています。しかし、長期耐用性が見込まれるようになってくると、比較的活動性の高い若年者や関節可動域の良い患者さんにも行われるようになり、近年では術後の脱臼が一番の合併症となってきています。
ドクター紹介 整形外科医 穗積 晃 Hozumi Akira 現在では脱臼しにくい手術方法や、早期の社会復帰を可能にする最小侵襲手技への取り組みが盛んに行われるようになってきました。当院でも適応となる患者さんがいれば積極的に行っていく予定です。 医師紹介ページはこちら