肺炎にかかると、高熱と咳、たん、倦怠感がでるのが一般的です。
しかし、たんが出ない肺炎もありますし、高齢の方では、いずれの症状も出にくい場合があるので、注意が必要です。
診断は胸部レントゲンやCTで肺に陰影があることを確認し、その日のうちに抗菌薬による治療を開始する必要があります。薬の発達によって、軽い場合は外来でも治療ができますが、重症の場合は入院して治療する必要があります。
原因となっている細菌の検査は、たんを培養する方法に加え、のどや尿から抗原を検出することで行います。
肺炎の多様性
特に高齢者の肺炎では、その多様性が特徴であり、このことが治療や予防の対策を複雑にしています。細菌、ウイルスなど病原体が多種多様であること、持病の種類や体力の差に違いがあることに加え、食べ物を飲み込む機能が落ちている人におきる誤嚥性肺炎が多いことがその多様性の原因です。
介護施設や病院にいる人に限らず、自宅にいる人も高齢になればなるほど誤嚥性肺炎の頻度が増えていきます。同じ肺炎でもいろいろなケースがあるので、診断と治療にあたる医師からよく説明を聞く必要があります。
誤嚥性肺炎
本来は肺に入らない、食べ物や唾液を肺に吸い込むことによって、菌が肺に入り肺炎がおきるものが誤嚥性肺炎です。
私たちは市中でおきる肺炎の三分の一で誤嚥が関係していると考えていますが、これは最小限の推定で、ほかの研究では高齢者肺炎の60%くらいだと指摘しているほど多い肺炎です。
年齢があがるほど頻度が高くなり、また脳梗塞やのどの病気の人に加え、睡眠薬を飲んでいる人、胃薬を飲んでいる人には起きやすいと考えられています。
口腔内にいる病原体を吸い込んで肺炎になりますので、口腔内を清潔に保つことが大切です。口腔ケアや嚥下リハビリなどで口腔内を清潔にして、嚥下機能を改善させるのも有効と考えられています。
ワクチンによる予防
細菌で一番多いのは肺炎球菌という菌で、肺炎全体の四分の一くらいに関与しており、
65歳以上で急激に頻度が増えます。この菌は髄膜炎を起こすなど重症化する性質をもっており、100年以上前から
ワクチンの開発がすすめられました。現在、高齢者には2つのワクチンを使用することができ、ひとつは2014年から定期接種になっています。重症感染症を予防する意味で重要なワクチンですが、一方で肺炎球菌には100種類くらいあり、そのうちの一部に効果を示すものであり、予防できない肺炎も多くあることを知っておく必要があります。
市中で肺炎にかかる人のたんを調べると、約四分の一から何らかのウイルスが検出されます。このことは、いわゆる風邪の予防が肺炎を予防するのにも役立つということを示しています。インフルエンザウイルスは、特に肺の持病がある人には危険です。 私たちの調査では、インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザウイルスによる肺炎を半分くらい予防することがわかりました。
おわりに
肺炎は罹患率が高く、その原因も多岐にわたりますので、様々な対策を組み合わせて取り入れる必要があります。また、肺炎は時に命を奪うこともあり、体が弱って栄養が足りない人では特に危険とされています。日頃から体力をつけておくことも大事です。