【虹彩Vol.38 Web版ページ】ドクターのお話
視機能の衰え アイフレイル
「アイフレイル」とは?
我が国は世界と比べてみても先頭をきって超高齢化社会に突入しているといえます。そのような状況の中、厚生労働省では「健康寿命の延長と健康格差の縮小」を目標に掲げており、そのカギとなる「フレイル」という概念が急速に拡大しています。
フレイルとは簡単に言うと「もろさ、弱さ、はかなさ」を表します。「加齢に伴う予備能力低下のため、ストレスに対する回復力が低下した状態」を示す概念です。健常から要介護へ移行する中間の段階と言われており、自立障害や健康障害を招きやすい状態をさします。
日本眼科学会では、健康寿命延伸のために視覚の重要性を訴え、啓発活動として「アイフレイル」対策活動を提唱しています。
アイフレイルとは「加齢に伴って眼の脆弱性が増加した状態に、様々な外的・内的要因が加わることによって視機能が低下した状態を示す」という概念です。
アイフレイル
対策の重要性
眼球は、加齢により予備能力が低下し、ストレスからの健康障害に対する脆弱性が増加してきます。放置すると、何らかの内的・外的要因が加わることによって障害を発症し、視機能が低下します。更に進行し、重度の視機能障害に陥ると、自立機能の低下や日常生活に制限を伴う可能性も出てきます。
そのような状態にならないようにするためには、早期に発見し適切な介入を行うことによって、ある程度の機能を回復させること、進行を遅らせること、症状を緩和させることが重要です。
アイフレイルにつながる要因
【内的要因】
- ●目の長さが長い(強度近視)、逆に極端に短い(遠視)
- ●糖尿病、高血圧などの全身疾患がある
- ●家族に目の病気の方がいる
【外的要因】
【加齢に伴う変化】
- ●形の異常(形態・構造的変化)
細い血管がもろくなる(血管脆弱化)、慢性炎症、神経ももろくなる(肺状板脆弱化、網膜神経細胞減少)、白内障が進む(水晶体混濁)、角膜内皮細胞減少
- ●機能の異常(機能的変化)ピントが合いにくくなってくる、老眼・老視が進んでくる(調節力低下、融像幅低下、収差の増加、コントラスト感度の低下)
アイフレイル対策の目標
- ●視覚障害により日常生活が制限される人を減らす
- ●自立機能の低下により、要介護状態に至る人を減らす
- ●読書、運転、スポーツ、趣味など人生の楽しみや、快適な日常生活が制限される人を減らす
日常に気を付けること
目の健康を長く維持するためには、ふと気づいた見えにくさを「歳のせい」として片づけないことが重要です。
具体的には、次のようなことに気を付けましょう。
●見えにくさに対して適切な眼鏡処方
●ドライアイの症状があれば、生活習慣改善と適切な点眼治療
● 自覚症状がなくても、緑内障と診断されたら、将来の視野維持のために治療を継続する
● 加齢黄斑変性の兆候がみられたら、生活習慣改善、サプリメントの摂取、眼科定期受診
● 白内障で見え方の質が落ちているなら、手術によって生活の質を改善する
アイフレイルの
セルフチェック
最近、なんとなく見にくい、調子が悪いと感じる方は、まずはご自身でセルフチェックを行ってみてください。「自分はもしかしたらアイフレイルかも?」と気になる症状がある方は、早めに眼科を受診しましょう。
アイフレイル セルフチェック
- 目が疲れやすくなった
- 夕方になると見にくくなることがある
- 新聞や本を長時間見ることが少なくなった
- 食事の時にテーブルを汚すことがある
- 眼鏡をかけてもよく見えないことがある
- まぶしく感じやすい
- まばたきしないとはっきり見えないことがある
- まっすぐの線が波打って見えることがある
- 段差や階段で危ないと感じたことがある
- 信号や道路標識を見落としたことがある
2つ以上当てはまった人はアイフレイルかも?
アイフレイル セルフチェック
- 若い人向け -
- 目が疲れやすくなった
- 夕方になると見にくくなることがある
- 若い頃より見にくくなったと感じる
- 眼鏡をかけてもよく見えないと感じることが多くなった
- まばたきしないとはっきり見えないことがある
1つでも当てはまった人はプレアイフレイルかも?
眼科医
- 松本 牧子
- Matsumoto Makiko
アイフレイルの範囲は幅広く、重篤な視機能低下を伴ったケースから、何となく見えにくいと感じるケースまで様々です。気になる症状や疑問に思うことがありましたらお気軽にご相談ください。
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